ソフトウェア特許のクレームの注意点

米国実務

本記事ではソフトウェア特許のクレームにありがちな112条違反について説明したいと思います。ソフトウェア関連発明では、ユーザ入力に基づいて処理を行うケース等がよくあります。しかしこのユーザ入力行為をクレームに記載すると112条違反になることがあります。112条違反で特許が無効とされた事件(IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon.com, Inc. 430 F.3d 1377, 1384, 77 USPQ2d 1140, 1145 (Fed. Cir. 2005))を取り上げて解説したいと思います。

要点

米国特許におけるクレームでは、装置と方法とが1つのクレームに混在した場合に、不明確として35 USC 112(b)により拒絶及び無効とされます(MPEP2173.05(p))。冒頭で触れたようにソフトウェア特許のクレームが、装置・システムのクレームの場合において、ユーザの入力行為を”the user uses the imput means”等とそのまま書くと拒絶・無効となります(IPXL事件)。この表現を回避するためには”configured to receive the user input”(ユーザからの入力を受付可能)などとするのが得策です。以下、IPXL事件について概要を説明します。

本事件での112(b)違反に関する解説

IPXL Holdings社(以下、IPXL社)は、Amazonの1-clickシステムに対して、自己が有する米国特許(US6,149,055、以下’055特許)に基づき、Amazonに特許侵害訴訟を提起しました。地裁において、当該特許の対象のクレームは、装置の発明であるのか、方法の発明であるのかが不明確であるとして112(b)に基づき無効と判示されました。これに不服のIPXL社がCAFCに控訴したのが本事件です。以下、’055特許のクレームの内容と、CAFCの判断について見ていきたいと思います。

‘055特許の概要

‘055特許は、決済処理プロセスの効率化に関する特許です。書誌事項は以下のとおりです。

特許番号: US6,149,055
発明の名称: Electronic fund transfer or transaction system
特許権者(登録時): IPXL HOLDINGS, LLC
出願日: 1996/6/26
登録日: 2000/11/21

対象のクレーム

112(b)の判断対象とされたクレームは以下のクレーム25です。特許発明の概要としては、ユーザの複数の決済情報を予め記憶しておき、決済処理時に当該情報を一覧表示してユーザの選択を受け付けることで、決済プロセスを効率化するものです。

25. The system of claim 2 wherein the predicted transaction information comprises both a transaction type and transaction parameters associated with that transaction type, and the user uses the input means to either change the predicted transaction information or accept the displayed transaction type and transaction parameters.

US6,149,055

対象のクレーム25では、上述の通りユーザが用いる決済情報を予測し、当該予測された決済情報を変更するか承認するかをユーザ入力により決定するというものでした。

ここで、上記の強調表示部分”the user uses”という表現が、112(b)の観点で問題とされた部分です。この表現があることにより、ユーザが入力可能な入力手段を備えるシステムを構築した場合に侵害が成立するのか、あるいは、ユーザが実際に入力行為を実行した場合に侵害が成立するのかが不明確であるというのが裁判所の結論です。

なお当該結論を含め、IPXL事件に関しては前述のMPEPにも記載されています(MPEP 2173.05(p))。MPEPのこのセクションにはIPXL事件を引用した別の裁判例も記載されており、クレームドラフト時には十分注意する必要があります。

なおクレーム25に関連するクレーム(従属元のクレーム1,2)は以下のとおりです。これらについては112(b)違反による無効はありませんでしたが、他の先行技術に基づく102違反により無効とされました。したがってIPXL社による特許権侵害の主張は認められませんでした。

1. An electronic financial transaction system for executing financial transactions, the transactions being characterized by a transaction type and a plurality of transaction parameters, the system comprising:
a central controller;
a communications network;
a terminal device selectively connectable to the central controller through the communications network, the terminal device comprising:
a processor;
a display connected to the processor;
an input mechanism for providing input to the processor;
the system further comprising means for storing user defined transaction information, the transaction information comprising at least one of user defined transactions and user defined transaction parameters;
the processor causing the display to display on a single screen stored transaction information; the input mechanism enabling a user to use the displayed transaction information to execute a financial transaction or to enter selections to specify one or more transaction parameters.

2. The system of claim 1 wherein the system predicts transaction information that a user of the terminal will desire based on stored data for that user.

US6,149,055

まとめ

米国特許におけるクレームでは、装置と方法とが1つのクレームに混在した場合には不明確であるとして35 USC 112(b)により拒絶及び無効とされますので注意が必要です。ここまで読んで頂きありがとうございました。

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