自発補正(Preliminary amendments)の適切なタイミングは?

米国実務

例えばPCT出願を米国に移行する場合、米国の特許実務に合わせて自発補正を行うことが一般的です。例えばマルチクレームを自発補正により解消することが考えられます。ここで自発補正(Preliminary amendments)は、1回目のOAが出た後では行なえません。

ということは、自発補正は1回目のOAが出る前だったらいつでも出せるの?

自発補正は1回目のOAが出る前だったらいつでも出せますが、自発補正が不可とされることがある点に注意が必要です。結論からいうと、自発補正が不可とされないようにするために自発補正の適切なタイミングは米国出願(PCT出願の場合は米国移行)から3ヶ月以内といえます

自発補正が不可とされる場合は?

自発補正が不可(disapproval)とされるかどうかは1回目のOAの準備状況、補正による変更の程度等、様々な要因によって決まります。この要因についてはMPEP 714.01(e) Amendments Before First Office Actionの”B. Unduly Interferes With the Preparation of an Office Action”に規定されています。このセクションには細かく規定されていますが、要するにOAの準備状況によって個別判断されることになります。OAの準備状況は出願人側からは確認できないことですので、補正が認められるか否かは出してみないと分からないということになってしまいます。

ただし、上記要因にかかわらず、米国出願(PCT出願の場合は米国移行)から3ヶ月以内に自発補正が提出されていれば、自発補正がこれらの要因によって不可とされることはないと規定されています(37 CFR 1.115(b)(3))PCT出願の場合には以下の 37 CFR 1.115(b)(3)(iii)が該当します。

37 CFR 1.115 (b)
(3) A preliminary amendment will not be disapproved under (b)(2) of this section if it is filed no later than:
(i) Three months from the filing date of an application under § 1.53(b);
(ii) The filing date of a continued prosecution application under § 1.53(d); or
(iii) Three months from the date the national stage is entered as set forth in § 1.491 in an international application.

したがって自発補正が不可とされない期間である、米国出願(PCT出願の米国への移行)から3ヶ月以内が、自発補正をする適切なタイミングといえます。なおこの期間は、Office Actionへの応答期限のように案件ごとにUSPTOから示されることはありません。

なお、出願と同時に自発補正をすることも当然できます。この場合も3ヶ月以内に当てはまりますので、自発補正が不可とされることはありません。加えて出願と同時に自発補正をした場合には、追加的なメリットがあります。これは

自発補正 vs 1回目のOAの応答期間内の補正

さて、自発補正は3ヶ月以内に行うことで確実に審査対象とすることができますが、3ヶ月を超えてしまうと1回目のOA後の応答期間内に補正するしかなくなります。

1回目のOA後の応答期間内に補正すればいいんじゃないの?審査の結果を見てから補正するのでもいいような気がするけど?

確かに、先行文献を回避するためのメインクレームを限定するような補正は1回目のOA後の応答期間内にするほうが効率的な場合があると思います。他方で、例えば新たなクレームを追加するような補正は、出願から3ヶ月以内の自発補正により行うのが適切です。なぜなら1回目のOA後の応答期間内に補正した場合、補正した内容は次回のOAでないと審査結果が得られないためです。そして次回のOAはFinal OAになる可能性が高いため、Final OAへの対応としてさらなる補正が必要な場合にはRCEが必要になってしまう等、コストが増大してしまいます。

日本の場合はどうだったっけ?

自発補正のタイミングは日本の特許実務とは相違することにもご注意下さい。日本の場合、自発補正は最初の拒絶理由通知の送達前であればいつでも行うことができます。

まとめ

自発補正の有効なタイミングは出願から3ヶ月以内です。この期間中に必要な補正を行うことで、1回目のOAで確実に補正後の内容で審査を受けることができ、余計なコストを抑えることができます。

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