Final Office Actionに対して取りうる措置は?

米国実務

要点

Final OA応答時には各種の取り得る措置があります。具体的には以下の8つの措置を取ることができます。

  • クレームの補正 + 反論
  • クレームの補正 + 反論 + AFCP2.0
  • クレームの補正 + 反論 + RCE
  • 反論
  • 反論 + デクラレーション + RCE
  • 審判(Appeal)
  • プレアピール(Pre-Appeal Brief Conference)
  • 応答しない(放置)

以下では、各措置のポイントについて解説したいと思います。

取り得る措置のポイント

まず全てに共通することとして、出願人は上記措置をFinal OAの応答期間内に取る必要があります。応答期間は発行されたOAに記載されます(37 CRF 1.134)。

Final OAの応答期間3ヶ月です(MPEP 706.07(f))。この3ヶ月はa 3-month shortened statutory period (SSP)と呼ばれ、最大で3ヶ月の延長が可能です(合計で、FInal OAの発行から6ヶ月以内に応答可能)。SSPを過ぎて応答する場合には延長費用の支払いが必要です。応答時に延長申請と延長費用の支払いを行います。

Final OAが発行された後2ヶ月以内に応答した場合にはメリットがあります。当該タイミングで応答した場合、Final OAが発行された後3ヶ月経過時点、又はAdvisory Actionが発行されたタイミングのいずれか遅い方でSSPの期限が満了する、というものです。つまり2ヶ月以内に応答しておけば、Advisory Actionの発行が遅れた場合でも、Advisory Actionの発行から延長費用の支払いが起算されることになり、一般的に延長費用にかかるコストを抑えることができます。なおいかなる場合でも、FInal OAの発行から6ヶ月以内に応答しなければ出願は放棄されます。

以下、各措置のポイントを解説します。

クレームの補正 + 反論

1つ目は最もオーソドックスな措置です。本措置は一般的に審査官の拒絶が妥当である場合に使います。拒絶の解消が困難である際、例えばサブクレーム、出願当初明細書の内容を根拠にクレームの補正を行って反論しているケースが多いです。

ここでFinal OA応答時のクレームの補正には制限がある点に注意する必要があります。具体的には認められる補正として以下が挙げられています(MPEP 714.13II, 37 CRF 1.116(b))。

  • クレームの削除
  • 審判のための形式的補正
  • New Issueの無い補正

日本の実務では、最後の拒絶理由通知の応答時に、クレームに対する限定的減縮補正が認められていますが、米国では当該補正を認める旨の規定はありません。米国ではケースバイケースで判断されているのが実情です。

なお審査官の拒絶が失当であり、補正しなくても反論可能な場合においても、早期権利化のメリットや禁反言のリスクを重視して、クレームの補正を行う場合も実務上あります。例えばAllowable Claimが示されている場合には、あえて反論せずに、補正して早期権利化を図ることも一案です。またこの場合、反論の余地が合った内容については継続出願を行って別途権利化を目論むこともできます。

クレームの補正 + 反論 + AFCP2.0

2つ目は1つ目と似ていますが、USPTOの無料の試行プログラムのAFCP2.0を用いる点のみが異なります。このパイロットプログラムを使うと審査官に調査及び審査のための時間が付与され、その範囲内で審査官に出願を審査をさせることができます。USPTOにおける審査官の評価の都合上、Final OAに対する応答において審査官が時間を割くことはあまり期待できませんが、AFCP2.0を使えば審査官の時間を確保することができます。この部分は審査官の評価システムとも関係します。

AFCP2.0を利用するには、少なくとも1つの独立クレームの補正(クレーム範囲を拡大しない補正に限る)をする必要があります。逆にいうと独立クレームの補正をする場合は、審査官に調査及び審査のための時間を与えることができるため、AFCP2.0を積極的に利用するのが得策といえます。

調査及び審査のための時間は3時間とされています。(https://www.uspto.gov/sites/default/files/patents/init_events/afcp_guidelines.pdf)

AFCP2.0はパイロットプログラムのため期限付きですが、現状2022/9/30まで利用可能となっております。毎年9月頃に延長するか否かがUSPTOにより以下のサイトで発表されており、試行プログラムの開始から毎年延長されています。

After Final Consideration Pilot 2.0
The After Final Consideration Pilot 2.0 (AFCP 2.0) is part of the USPTO's on-going efforts towards compact prosecution and increased collaboration between exami...

クレームの補正 + 反論 + RCE

3つ目は、クレームの補正がFinal OA応答時の補正要件を満たさない場合に用いられます。Final OA応答時の補正要件を満たすかどうかの判断が難しい場合には、上記の1つ目(RCEの請求をしないで補正して応答)または、2つ目の措置でAFCP2.0を請求して一度トライしてみるのも一案です。もし補正要件を満たさない場合、さらなるサーチが必要な場合等は、基本的にAdvisory Actionが発行されるためその後にRCEをすることもできます。なおRCEは審査手続き終了後であれば、以下のタイミングのうち一番早いものより前であれば行うことができます (37 CFR 1.114(a))。

  1. 特許発行料の支払い (発行の取下げを求める請願(§1.313)が認められた場合を除く)
  2. 出願の放棄
  3. CAFCへの訴訟提起(35 USC 141)、または地裁への訴訟提起(35 USC 145, 146) (訴訟が終結した場合を除く)

審査手続き終了」とは、直近に発行されたOAがFinal OAであるとき、許可通知が発行されたとき、出願が審判に継続しているときを表します(37 CFR 1.114(b))。

発行の取下げを求める請願」とは、特許発行料を一度支払った後に、発行の取り下げを求める手続きです(37 CFR §1.313)。IDS義務が特許の発行まで続くため、関連する文献を知ったタイミングが支払い後で特許発行前である場合にはこの手続きが行われます。請願が認められれば、RCEをすることができ、関連する文献の提出も可能になります。最近はQPIDSを使って対処をするのが一般的です。

Final OA応答時には、上記のうち2つ目の出願の放棄の時期を注意する必要があります。Final OAの発行から6ヶ月後(応答期間の3ヶ月+最大延長期間3ヶ月)までにはRCEをする必要があります。例えばFinal OAの発行から6ヶ月の直前に延長費用を支払って応答したような場合は、Advisory Actionが、この期限に間に合わない可能性もあります。Advisory Actionが出ていようがいまいが、Final OAの発行から6ヶ月の期限は変わりませんので、遅くともこのタイミングまでには許可通知が得られていない限りはRCEをする必要があります。

反論のみ

上記と異なり、審査官の認定に真っ向反論したい場合、又は補正をしないでチャレンジしたい場合には、反論のみで応答することも一案です。

反論 + デクラレーション + RCE (+補正)

拒絶解消の証拠(追加実験の結果、明確性の証拠、専門家の意見)を示す場合には、デクラレーションにより提出する必要があります(37 CFR 1.132)。このデクラレーションはFinal OA応答時には基本的に提出できないため(MPEP716.01)、RCEを請求する必要があります。

また上記と合わせて補正を行う場合にも上記同様の措置をとることになります。例えば追加実験の結果、ある数値範囲で予期せぬ効果が得られることが示せることがわかった場合など、クレームの範囲を当該数値範囲に補正し、かつRCEを請求して、追加実験の結果をデクラレーションで提出する、という対応が考えられます。

審判(Appeal)

出願が2度以上拒絶された場合は審判請求できるため、Final OA発行後は審判請求が対応策の1つとなります。審判を請求することでPTAB(審判部)が特許性を判断することになるため、過去に数度のOAやRCEを繰り返している等、審査官との議論が平行線をたどっているような場合は有効な措置のひとつです。

審判をする場合、Final OAの応答期間内に審判請求書を提出し、かつ手数料を支払います。その後、所定期間内に具体的な反論内容を記載したAppeal Briefを提出します。またAppeal Briefを提出する前までであれば、Final OAの応答期間の補正と同様の制限下でクレームの補正も可能です(37 CFR 41.33(a))。

Appeal Briefを提出する所定期間は2ヶ月です(MPEP1205.01)。この期間は延長手数料を支払えば最大5ヶ月延長できるため合計で7ヶ月となります(37 CFR1.136(a))。

プレアピール(Pre-Appeal Brief Review Request and Conference Pilot Program (PABR))

審判請求と同時にプレアピールを請求することができます(MPEP 1204.02)。Appeal Briefの提出の前段階で利用でき、また早期に、審査官の合議(Panel)による結果を得ることができます。

プレアピールを請求すると請求から45日以内に結果(notice of panel decision)を得ることができます。このタイミングで許可可能とされる場合もあります。一方拒絶維持の場合には、通常の審判同様、Appeal Briefを提出する必要があります。Appeal Briefは結果通知から1ヶ月以内に提出する必要があります。

応答しない(放置)

審査官の拒絶が妥当であり、補正しても拒絶を覆せる可能性が低い場合には応答せずに放置することも措置の一つです。これにより弁護士費用等のコストを低減できます。応答期間内に応答しない場合には特許出願は放棄されます(MPEP711)。

まとめ

以上説明しましたとおり、Final OA応答時には各種の取り得る措置があります。上記の8つのいずれかの措置を取れるためそれぞれのポイントを押さえて対応する必要があります。ここまで読んで頂きありがとうございます。

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