私は数年前に米国の弁理士試験(Patent Agent試験)に2ヶ月弱で合格しました。Pagent Agent試験の情報はあまり多くは存在しませんので、概要、及び勉強方法及び勉強期間など、役に立つと思う情報を共有したいと思います。
Patent Agent試験って?
Patent Agent試験(Patent Bar Exam)は日本の弁理士に相当する米国パテントエージェントの資格試験です。この試験に合格してUSPTOに登録することで、パテントエージェントになれます(米国で特許に関する代理業務を行えます)。試験の合格率は、直近のデータでは48.9%と、日本の弁理士試験よりも合格率は高いです。試験に関連する最新情報は以下のUSPTOのHP(Registration examination)をご確認下さい。
日本の弁理士・実務家が受験・合格するメリットは?
上述の通り、試験に合格しただけでは米国パテントエージェントにはなれず、USPTOに登録する手続きをしなければなりません。日本で弁理士として活躍する方の多くは日本で働いていると思いますので、この登録手続きが一般的に困難です。
他方で、パテントエージェント試験に合格した事実は、アピールできる大きなポイントになります。特に試験内容は、米国の特許実務に関連する知識を問うものであるため、米国実務に関する知識を有することを示すことができます。また多くの日本特許出願は外国出願、特に米国出願する傾向にありますし、業務上、米国の実務知識が必要なケースは多いので、仕事をしていく上で試験対策で勉強した内容が役立ちます。
さらに試験は英語で行われますので、一定程度の英語力を有することを示せます。知財業界では英語力が重要なスキルですのでこの点は大きいと思います。
試験の形式は?
試験の形式は多肢選択式(5択問題)で、日本の弁理士試験の短答試験と同様です。試験時間は6時間(午前3時間、午後3時間、昼休憩が1時間)です。問題数は午前50問、午後50問の合計100問です。正答率70%以上で合格です。お昼は1時間ありますが、事前にどこで食べるかを決めておいたほうがいいと思います。午後の開始時間に遅刻すると(当たり前ですが)午後の試験時間がその分短くなります。
なお試験は年に何回も受験できます(具体的には不合格後30日間の期間をあければ再受験できます)。この点、日本の弁理士試験よりも受験者フレンドリーです。とりあえず一回受けてみよう!という感じで気軽に受けてもいいと思います。私は早く合格したかったので「落ちたら最後」という気持ちで自分を鼓舞して、1回で合格しました。
試験はコンピュータ受験です。しかし自宅や自分のPCで受けるわけではなく、試験会場に設置されているパソコン端末で回答する形です。米国にはありがちですが、試験会場はとても寒いので防寒対策は必須です。
書籍等の持ち込みはできません。ただパソコン端末でPDF版のMPEPを参照することができます。この点、一切書籍を参照できない日本の弁理士の短答試験よりも易しいです。とはいえ、MPEPを読み慣れていないと時間が足りなくなる点に注意が必要です。コンピュータ受験の概要が以下のページのTutorialというセクションのリンクから閲覧できます。本番と同じUI画面なので、受験する前に操作に慣れておいたほうがよいです。
試験の結果は、午後の3時間の試験を終えた後にすぐにPC画面上に表示されます。緊張する瞬間です。正式な合格通知は後日郵送されます。
具体的な対策(勉強期間、勉強方法)は?
日本の弁理士試験の勉強は、書籍、対策講座、ゼミなどがあるので情報収集がしやすいですが、米国パテントエージェントについては特にありません。したがって自分で情報を探して、試験合格に役立ちそうな情報を集めていく必要があります。
そのため私はまず、過去問を確認しました。過去問は以下のUSPTOのwebsiteから入手可能です。ただこの過去問はかなり古く、現在の法律(AIA)及びMPEPと沿わない部分もある点に注意です。あくまで問題の分量や難易度を判断する材料とするのが適切です。
過去問をみて分かる通り、問題文は基本的に長いです。問題の難易度は、日本の弁理士試験よりは低いものの、実務の全体像を知っている必要があり、MPEPをしっかり読んでいないと解けないレベルです。私がとった対策は以下2つです。
- 過去問に関連するMPEPの該当箇所を読む。
- 最新の過去問を入手して解く。
1つ目の対策は、過去問に関わる重要箇所をピックアップして、そのMPEPの該当箇所を読み込むというものです。MPEPの該当箇所は上述の過去問のAnswerに記載されています。
勉強している途中で気づきましたが、この試験はいかにMPEPをきちんと読んでいるかを問う試験です。ただ過去問はMPEPの全範囲(Chapter100〜2900)です。全部を精読するのは相当量の時間がかかり非効率なので、過去問で問われたところを中心に読むのが効率的です。過去問は似たような部分を繰り返し聞いています(同一の問題も繰り返し出題されます)。過去問で問われた部分を中心に前後をしっかり読んで、後は全体をざっと見ておくのが得策です。
2つ目の対策は、最新の過去問を入手するというもので、これは残念ながら、私が知る限り無料のものは存在しません。私は、ある程度定評のある、wysebridgeのサービスを利用して最新の過去問を入手しました。以下のリンクからアクセスできます。
wisebridgeでは最新の過去問を試験形式で解くことができますし、なんと言っても解説がきちんと付いています。私は上述のMPEPなども使って腰を据えて学習しましたが、wisebridgeを繰り返し解くだけでも、合格ラインに到達できるかもしれません。それくらい効果は大きいと思います。
wisebridgeはウェブを通じたサービスなので、やや反応が遅い、探したい問題の検索がしづらいというのが少し難点です。私はwisebridgeのテキストデータを用いてankiwebのフラッシュカードにして、PC、スマホを使って繰り返し学習しました。ankiwebは資格試験には非常に有用で、私はフル活用しています。特定侵害訴訟代理付記試験もこれを使いました(→弁理士付記試験に1度の受験で合格するには?)。私にとっては必須ツールです。AndroidもiOS(iOS版は有料)も対応していますし、誰もがスキマ時間含め、学習効率を高めることができます。
Ankiwebについての記事はこちら→試験対策でのAnkiwebの効果的な使い方
以上の対策を私は2ヶ月弱かけて実行しました。勉強しはじめの頃は過去問がほぼ解けなかったのですが、後半になると7〜8割位解けるようになり、直前にはほぼ9〜10割解けるようになりました。試験日はほぼ合格を確信した状態で受験しました。
繰り返しになりますが、MPEPをいかに読んでいるか、過去問をいかに解いているかで合否が決まると言ってもいい試験です。ある意味、日本の弁理士の短答試験とほぼ同じです。日本の青本に相当する対策書籍がMPEPという感じです。過去問は日米いずれも超重要です。
おわりに
ここまで読んで頂きありがとうございます。しっかり対策すれば、十分に合格できる試験です。米国実務に関わる方は実務上役立ちますし、キャリアアップに最適です。個人的には、米国実務の対応が多く特定侵害訴訟代理付記試験よりも実務で役立っています。このブログがこれからこの試験に挑戦される方のお役に立てると幸いです。
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